Cozy Cottage in Denmark



このデンマークのシンプルなコテージには
空間配置のヒントが詰まっています。

私達にとって本当に必要な空間は限られています。
キッチン、ダイニング、リビング、バスルームそしてベッドルーム。

現代の日本では、空調の効率性などを考えると共に
部屋数を多く見せようと各空間を仕切る傾向が強いですが
その分、敷地面積の有効活用が十分でない設計が多いように思います。

コテージ自体は夏用の別荘のため、空間の構造は至ってシンプル。
限られた敷地内で暮らす人達に
是非参考にして欲しいヒントがいっぱいです。







玄関を入ると、
そこは光でいっぱいの居心地の良い小さな玄関ホール。
玄関ホールと言うと、日本では仕切るべき場所として(靴を脱ぐ場所ですからね)
どちらかというと部屋から閉め出したいような場所ですが
こういった部屋続きの作りは、欧米の雪が多い場所によく見られます。
ブーツや靴下を乾かす場所が必要だからでしょうか。

隣のメインルームとの間に小さな壁がひとつ。
そこに両側面に向けて開口部のある暖炉がついています。
このたったひとつの暖炉で部屋全体を暖めるために
寒くなりがちな玄関サイドにも開口部があるわけです。
これは頭がいい!





そしてこの玄関ホールにも
居心地の良いソファとラグ、ライトスタンドを配置することで
第二のリビングのような役割を持たせています。
これもとてもよく考えられたデザインです。
デンマークでは夏といえど夜は冷え込みますから
暖炉をつけていればこのソファでもゲストが眠れます。

この玄関ホールとメインルームの出入り口はふたつ。
扉はほぼガラスになっています。
これも素晴らしい計算ですね。
玄関ホール側に面した方角からの光が、
メインルームにたっぷりと入りますし
小さな空間でも各部屋に圧迫感が生じません。
ついでに暖炉も向こう側が見えますので、壁を感じさせませんね。





壁も白く開口部だらけ、となると
少し肌寒いくらいの雰囲気になりますが
床と天井の木肌が、涼やかさを保ちながら温もりを保持しています。

シャギーのラグや、全体を引き締めているアイアンの黒、
そしてポイントとなっている煉瓦のような暖かな赤。
これらが「別荘」よりも「家」のような、
ぬくぬくとした居心地の良さを創り出しています。



メインルームではキッチン、ダイニング、リビングが
全て同じ空間の中に収まっています。
空間を上手に分けているものはなんでしょう?





まずラグです。
両方のラグが、床に違和感のないアースカラーですが
素材や形状を変えることで全く違う印象を与え
さりげなく空間の役割を分けています。

空間を分けるためにリビングのソファの背を
ダイニングに向ける方法を取る人もいますが
それをしてしまうと空間が「分断」されてしまい
せっかく空間を大きく使っていても
結局のところ狭く感じてしまいます。
ラグを使い分けることによってこうして開放感を保ったまま
空間の役割をそれとなく分けることできます。

そしてふたつめは階段です。
階段が部屋の中にあります!
実はこれも空間を分ける大きな役割を持っています。

リビング側から見た時に
この階段とダイニングセットが
キッチンの認識を淡くするよう設計されています。
この階段はかなりシースルーですが
お子さんが居て不安な場合は
手すりや柵状のものを天井から床まで通すだけで
安全且つ違和感なく使えると思います。
(ガラスはキッチンの油が飛ぶので避けたいところです…)

そして更に、キッチンとダイニングの間にも
小さなアイランドキッチン(作業台)を置くことによって
空間がやんわりと区切られています。

キッチンに注目してみて下さい。
リビングや玄関ホールに使用しているような
「温かい色味」「ほっとする素材」を使用せず
むしろ家屋自体の色と素材に合わせています。
こうすることによって、キッチンが家と一体化し
リラックスする空間から上手に引き離されています。





よく見ると、階段の裏にワインラックがあったりしますが
リビングとキッチンが繋がっている途中にあるため、突然感がありません。
本当に見事ですね。


階段を上がると、小さな寝室があります。
元の記事では「屋根裏」と書かれていますね。





この部屋の奥には、ささやかなルーフトップバルコニーまであります。






これは1階の玄関ホールの上ですね。煙突が隣に出ています。
狭いながらに整然と、そして居心地良く作り込まれています。
デザインされた太い柵が、家の外見に合っているだけでなく、
多少の目隠し、そしてバルコニーでの安心感を創り出しています。
こういったアイデアは真似したいところですね。



このコテージ、なんと元は1885年に立てられた木造の小さな家でした。
おそらく以前あった壁をほとんど抜いたのだと思いますが
それにしてもこの空間の無駄のない使い方に
私は見れば見るほど惚れ惚れとしてしまいました。

陽射しが貴重な北欧の夏を充分に楽しめるよう
開口部や仕切り、暖炉、各部屋の役割などを上手に組み合わせて
しかもこういった間仕切りの無い家にありがちな
「カッコイイけどなんだかちょっと落ち着かない」
といったような雰囲気が全くありません。

家は、広ければ良いというものではないんですね。
空間の居心地の良さは、考え抜かれた計算と
そして統一されたインテリアデコレーションによって成立するのです。
非常に勉強になった1軒でした。








この別荘、この状態で売りに出されていたようです。(現在はすでに売約済み)
日本では画一的な建て売りばかり増えていますが
1885年の…とは言わないまでも、
リノベーションでこういった家を手に入れるのも、一案かもしれませんね。


Image Sorse | TRENDLAND


No comments:

Post a Comment